仕事図鑑

アニメ・CG業界の仕事

背景美術

背景美術が作品に与える影響は大きく、作品の世界観がミスマッチにならないように心掛けています。

アニメーション専攻卒

背景美術とは?

アニメの背景を作り上げる縁の下の力持ち

背景美術とは、アニメの背景を描き起こして作品のシーンや雰囲気を作り上げる仕事です。アニメの舞台は現代の街やファンタジーの空想世界、森や海といった自然の中など、様々な場所が選ばれます。また、同じような舞台であっても作品のトーンやテイスト、キャラクターの心情、ストーリーの状況によってあるべき背景の姿は異なります。そのため、監督の指示やアニメの内容に沿って最適な背景を描き分ける必要があります。アニメの背景だけに注目されるケースは多くありませんが、背景はアニメの印象を左右する重要な役割を担っています。まさに背景美術という仕事は、作品を支える縁の下の力持ちとしてやりがいと責任が大きく、多くのファンにアニメを楽しんでもらえた時にはこの上ない喜びを感じることができる仕事です。

背景美術ってどんな仕事?

背景を描きアニメの世界に息を吹き込む

アニメの背景美術はどのような絵にしていくかなど世界観の設定や、作品の全体像を描き表すことも背景美術の仕事です。キャラクターの色味や前後関係、時間経過など、アニメの内容やシーンに応じて様々な要求に応えていく必要があります。アニメの印象や雰囲気を表現するため、アニメの背景は大量の背景画が必要となり、30分の作品で約200~400カット作ることが一般的です。1枚の背景を一人のスタッフが全て作りこむのではなく、「美術監督」「美術設定」「背景美術スタッフ」といった役割ごとに仕事を進めていきます。それでは、それぞれの役割や仕事内容について紹介しましょう。

美術監督

アニメのシーンごとに背景を線画で描写し、背景の世界観やデザインの方向性を決定づける仕事です。原作マンガがある場合はその背景をエッセンスとして取り入れたり、現実世界にも存在する舞台であれば写真などを参考にしたりして背景を作り上げます。基本的にはシーンの場所の構造やスケールが分かりやすいよう、引きの画の状態で作成し、必要に応じて細やかな部分をクローズアップして描きます。

美術設定

美術監督が作成した背景の色味を決定するための美術ボードを作成します。美術ボードを元にアニメの背景が量産されていくので、責任重大なポジションです。また、背景美術スタッフのリーダーとしてクオリティやスケジュールの管理を行い、監督や演出からの要望を伝えて指揮するという役割も求められます。

背景美術スタッフ

美術監督や美術設定が作成した美術ボードを元に、アニメで用いられる背景を量産するスタッフです。背景の角度やサイズによっては、美術ボードからどのように描くべきか考えて自分自身のアイディアで表現しなければなりません。また、デザインが複雑な背景や頻繁に登場する背景は3Dで作成することも増えています。

どうすれば背景美術になれる?

背景美術への道のり

背景美術には高い画力が求められるので、アニメ制作のプロセスや専門知識が学べる、アニメ・美術系の専門学校へ通うことをおすすめします。専門学校では、アニメ制作における工程、原画・動画・着彩・背景・撮影・編集・CGなど一連の技術・知識を学ぶことができます。在学中から自然風景や室内、建物、時間による背景の違いなど様々なポートフォリオを作成し、アニメ制作会社への就職を目指します。ポートフォリオは色んなパターンがある程、評価にもつながりやすくなるでしょう。就職後は背景美術スタッフとして経験を積み、美術設定、美術監督へとキャリアアップしていきます。経験を積めばアニメの監督や演出といったポジションへのステップアップも目指せるでしょう。

求められる知識・資質

デッサン力

アニメの背景は遠近法などを活用した高度なデッサン力が求められます。立方体や円柱、球体などを適切に描き分け、影や色味の変化などを表現する必要があります。そのため、背景美術を目指す方はアナログやデジタルでのデッサン力を磨きましょう。

デジタルツールを使うスキル

背景美術はIllustratorやPhotoshop、ペンタブなどを活用して仕事します。専門学校や美術系大学などでこれらのツールの使い方を学び、プロとしてスキルを発揮できるレベルまで腕を磨くことをおすすめします。

コミュニケーションスキル

背景美術は様々なスタッフと連携して仕事に取り組みます。適切に意図を伝えたり、相手の考えを理解したりして、スムーズに仕事を進めるためのコミュニケーション力が必要不可欠です。

背景美術に必要な資格や試験情報

背景美術になるために必ず求められる資格はありません。しかし、現在アニメ背景の主流はほぼ手描きからデジタルへ移行しています。Photoshopクリエイター能力認定試験などデジタルソフトを使いこなせるスキルは身につけておいた方が良いでしょう。またCGクリエーター検定、色彩検定などの資格も、就職で有利になる可能性があるだけでなく、実務的なスキルを身につける上でも役に立つ資格ですので、積極的に取得を目指すとよいでしょう。
背景美術はクオリティの高い背景画を量産する仕事です。普段の生活でも風景に着目してアイディアを蓄えたり、それをデッサンして絵のスキルを向上させたりと、日々努力することでスキルアップすることができます。絵画や映画、アニメ作品などをたくさん見て、実際に手を動かして描いてみることで、即戦力となれるスキルを鍛えていきましょう。